夕食の後、リナが冷たい声で「二度とうちに来ないでください」と言った時、私は隣に座る我が子を見た。助けを求めると、新一は目をそらし、こう言った。「母さん、もう家族として付き合うのは無理だよ。」三十五年間、夫を亡くしてから一人で息子を育て上げ、教育費、結婚式、マイホームの頭金、そして孫の世話、総額三千五百万円以上を注ぎ込んできた私への報いが、これだった。「絶縁させていただきます。」しかも彼らは、…
夕食の後、静かなリビングにリナの冷たい声が突き刺さった。 「お母さん、はっきり言わせてもらいます。2度とうちに来ないでください。」 まるで氷水を浴びせられたような衝撃が全身を貫いた。隣に座る息子の新一を見る。助けを求めるように視線を送ったが、新一は目をそらした。その仕草が私の心臓を締め付けた。 「新一、あなたも同じ気持ちなの。」 長い沈黙の後、新一がようやく口を開いた。 「母さん、リナの言う通りだ。もう家族として付き合うのは無理だよ。」 家族。その言葉が虚しく響いた。35年前、夫をなくしてから必死で育ててきた一人息子。その息子が今、私を家族ではないと言い切った。 「あなたたち、本気で言っているの。」 私の声は震えていた。リナが畳みかけるように言い放った。 「ええ、本気です。今日限りで絶縁させていただきます。」 絶縁。その言葉が私の人生を根底から否定したように感じられた。 私は呆然と立ち尽くした。絶縁という言葉が頭の中で繰り返し響く。35年前の記憶が走馬灯のように蘇ってきた 夫が急死したのは新一が三歳の時だった。幼い子を抱えて途方に暮れた私は、保険営業の仕事を始めた。 朝から晩まで駆け回り、必死で契約を取った。雨の日も風の日も、新一のためだけを思って働き続けた 「母さん、今日も遅いの。」 幼い新一の寂しそうな声を思い出す。それでも私は歯を食いしばって頑張った。 おかげで年収八百万円を稼げるようになり、新一を私立の進学校に通わせることができた。 教育費だけで総額一千万円以上。大学の学費も全て私が払った。 新一が結婚する時には、結婚式の費用として五百万円を援助した。 さらにマイホーム購入時には頭金八百万円を提供した 「お母さん、本当にありがとうございます。」 あの時のリナの笑顔は嘘だったのか。 孫が生まれてからの三年間、私は無償で孫の世話をした。 保育園の送り迎え、病気の時の看病、全て私がやってきた。 それだけではない。 今でも毎月十万円の生活費の振り込みを続けている。 新一の給料だけでは住宅ローンが厳しいと聞いて、黙って振り込み続けてきた。 総額にすれば三千五百万円以上、私の人生の全てを注ぎ込んできた それなのに絶縁だという。 私の三十五年間は、一体何だったのだろうか。 涙が頬を伝い落ちた 思い返せば、リナの態度が変わり始めたのは半年前からだった。最初は些細なことから始まった 「お母さん、この煮物の味付け、ちょっと古臭くないですか。」 リナが眉をひそめながら箸を置いた。私が心を込めて作った肉じゃがを一口食べただけで、まるで毒でも口にしたような顔をした 「今時こんな濃い味付けする人いませんよ。塩分取りすぎは体に悪いんです。」 それからリナの攻撃は日に日にエスカレートしていった 「お母さんの服装、もう少し今風にした方がいいんじゃないですか。正直、一緒に歩くの恥ずかしいんです。」 買い物に行った先で、今は私から距離を取って歩くようになった。まるで他人のふりをするように。 私は深く傷ついたが、息子の妻だからと我慢した 「お母さん、また同じ話してますよ。最近物忘れひどくないですか。」 普通の会話をしているだけなのに、リナは大げさにため息をついた 「認知症の検査受けた方がいいんじゃないですか? 早期発見が大事らしいですから。」 私はまだ六十八歳。保険営業の仕事も現役でこなしている。年収八百万円を稼ぎ、部下の指導もしているのに、リナは私を認知症扱いした 「もう本当に時代遅れなんですよ、お母さんの考え方って。」 リナの言葉は日に日に辛辣になっていった。 私が何か意見を言うたびに、リナは鼻で笑った 「そんな昭和の価値観、今の時代には通用しませんから。」 最も傷ついたのは、リナの実母が訪ねてきた時のことだった 「うちのお母さん、本当に素敵でしょう。センスもいいし、話も面白いし。」 リナは実母の隣で嬉しそうに微笑んでいた。 実母には高級な和菓子でもてなし、私にはスーパー級のお茶菓子を出す。 その差別は露骨だった 「お母さんは元手企業の秘書だったんですよ。品があって教養もあって。」 私との比較を暗に込めた言葉だった。リナの実母は上品に微笑みながら、私を睨むような視線を向けてきた … Read more