結婚式の前日、俺は残業の合間に彼女に連絡を入れた。
「明日の結婚式の前に、俺の親友を紹介したいんだ。今、残業中でバタバタしててさ。ごめん。でも当日はゆっくり話せないだろうから、せめてLINEで挨拶だけでもしてほしい」
彼女の返事は、少し冷たかった。
「まあいいけど、早めに終わらせてくれる?毎日残業してるから疲れてるんだ」
「仕事熱心だね」
「そりゃ、親父の会社は倒産寸前だから熱心にもなるさ。親父も資金繰りに苦労してるんだよ」
「そうなんだ」
「大企業を経営する社長を父親に持つこと、いいよな。で、入社して課長になったんだろ」
「そんなことないよ。私も一生懸命仕事してる」
「はいはい。仕事してるつもりでいればいいよ。甘やかされて育ったお嬢様の力量なんて、高が知れてる」
彼女の言葉に、俺はカッとした。でも、それ以上言い返すことはできなかった。彼女の父親の会社が資金難で、うちの会社が投資を決めたからだ。
「でも、お父さんの会社が所有している土地は有望だから、うちが出資することになったんだ。何より地元密着型の不動産屋だからね。私たちよりこの地域のことに詳しいのは助かるよ」
「そうか。てか、早くその親友とやらを紹介してくれよ。早く仕事に戻りたいんだから」
「ああ、ごめんね。親友の連絡先を教えるね」
「早く終わらせろよな」
5分後、彼女が親友を連れてきた。
「初めまして。江です。こことは高校からの親友で、今は同じ会社の広報戦略室で働いてます。どうぞよろしく。あなたがとえさんでしたか?話は聞いてますよ。何でも学生の頃は男子顔負けの柔道部だったとか」
「その辺の男には負けませんよ」
「すごいですね。こりゃ気をつけなきゃ」
「この度はご結婚おめでとうございます。結婚するということは、ここのことを愛してるんですよね」
「おかしなことを聞く人だな。そりゃ愛してますよ。じゃなきゃ結婚しないでしょ」
「ままってのも面白くないな。感じだ。あんな小娘に何ができるだろう」
「いや、明日は一緒にドッキリを仕掛けないか?」
「仕方ないだろ。前も言ったけど、うちはギリギリなの。今日の結婚式だって無理して予定を開けたんだぞ。感謝こそされど文句を言われる覚えはない」
「そうだよね。わがまま言ってごめんなさい。でも、1つだけ聞いていい?私のこと本当に愛してる?」
「うん」
「エジとの婚約は破棄することにしたよ。そうでもこれで良かったと思う。昨日彼とLINEした時、なんとなくだけど、ここのことを愛してるようには感じられなかったからさ」
「やっぱり私なんかが幸せになるなんて無理だったんだ」
「そんなことない。ここは優しいから。だからあいつらは何をしてもいいと勘違いしただけ。環境に甘えずいつも努力してる子は幸せになるべき」
「とええ、ありがとう。ひとまず今日は帰ったらゆっくり休んね。明日は午前休だったよね」


