「あのさ、今日の飯、まずかったぞ。」——夫がそう言ったとき、私は介護でへとへとだった。それでも謝れば許してくれると思った。ところが夫は「介護してるくらいで、恩に着せるな。俺は仕事で疲れてるんだ」と吐き捨てた。あの日、私は何も言い返せなかった。でも、その翌朝、お母さんが倒れて、夫が何もしなかったとき、私はある決心をした。もう、このままじゃいけない。 コメントで続きを教えます。

「あのさ、今日の飯、まずかったぞ。」——夫がそう言ったとき、私は介護でへとへとだった。それでも謝れば許してくれると思った。ところが夫は「介護してるくらいで、恩に着せるな。俺は仕事で疲れてるんだ」と吐き捨てた。あの日、私は何も言い返せなかった。でも、その翌朝、お母さんが倒れて、夫が何もしなかったとき、私はある決心をした。もう、このままじゃいけない。 コメントで続きを教えます。

「あのさ、今日の飯、何あれ?味薄いし、手抜きだろ。正直、まずかったぞ。」

「ごめんなさい。介護の合間に作るから、手の込んだものは難しくて。次から、あなたの分は味濃くするわね。」

「はあ、なんだよそれ。言い訳かよ。介護してるくらいで、飯も作れないのか?家にいるんだから、それくらいできるだろ。」

「最近、お母さんの体調が不安定で、少し疲れてるの。夜中も起きることが増えてるし。あなたの母親なんだから、少しは手伝ってほしい。」

「はあ。俺は仕事してんだよ。それに、介護はやってるだろ。風呂だって連れて行ってるし、飯も運んでる。車椅子だって押してる。これ以上、何をしろって言うんだよ。」

「確かに、お母さんの移動補助は助かってるわ。でも、お風呂は連れて行くだけ。食事も運ぶだけ。それは介護じゃなくて、ただの手伝いよ。」

「はあ。なら、介護って具体的に何だよ。夜中の対応とか、トイレの世話とか、薬の管理も、一人じゃ大変なんだ。それ、全部、女の仕事だろ。俺に何をさせたいわけ?」

「だから、介護を手伝って言ってるの。介護はもうやってるって、さっき言っただろ。大体、介護してるくらいで、俺に恩着せがましく言うなよ。お前も母さんも、食わせるために、俺は仕事でめちゃくちゃ頑張ってるんだ。今日だって残業だし。」

「それは感謝してるわ。でも…」

「『でも』って時点で、感謝してねえだろ。俺だって疲れてんだよ。仕事から帰ってきて、ゆっくりする時間も欲しいんだ。それに、仕事してる間、俺は十分やってるだろ。お前が勝手に完璧主義なだけじゃん。」

「分かった。もう何も言わないわ。」

「家にいるんだから、介護くらいしろよ。誰のおかげで生活できてると思ってんだ?」

翌朝。

「昨日も夜中に起きて、看病してくれてありがとう。あなたがいなかったら、私はどうなってたかしら。」

「大丈夫ですよ、お母さん。夜に具合が悪くなることは、よくありますから。」

「でも、本来は息子がするはずのことよ。それなのに、あなたに任せっきりで、ごめんなさいね。あの子、昔から自分のことで精一杯で、周りを見ようとしないの。私の育て方が悪かったわ。」

「そんなこと、気にしないでください。裕介さんも仕事で疲れてますから。」

「あなたは優しいのね。でも、無理しないで。私のことは気にしないで。あなたも自分を大事にしてほしいの。お母さん。」

「ありがとうございます。」

数日後。

「ねえ、裕介、あんた、ちゃんとやってるの?」

「何が?」

「介護よ。お母さんのこと。あんた、さぼってない?」

「はあ?俺はやってるよ。風呂も連れて行くし、飯も運んでる。車椅子も押してる。何が不満なんだよ。」

「あんた、そう言うけど、夜中の対応は?トイレの世話は?薬の管理は?あんた、一度もやったことないでしょ。私が全部やってるのよ。」

「だから、俺は仕事してんだろ。家にいるお前がやればいいだろ。なんで、そこまで俺がやる必要があるの?」

「あんた、本気で言ってるの?お母さんはあんたの母親よ。私だって、仕事してるわけじゃないけど、あんたの言い分はおかしいわ。」

「うるさいな。とにかく、俺は疲れてるんだ。休ませてくれよ。」

数日後、また夜中。お母さんの容体が急変した。私は慌てて起きて、対応した。薬を飲ませ、着替えをさせ、布団を替えた。朝までずっと付き添った。

朝、疲れ果ててリビングに下りると、裕介がテレビを見ながらコーヒーを飲んでいた。

「おはよう。何かあったの?」

「夜中、お母さんが苦しそうだったから、看病してたの。」

「ふーん。で、朝飯は?」

「まだ作れてないの。今から作るわ。」

「はあ。早くしてくれよ。仕事に遅れる。」

私は何も言わずにキッチンへ向かった。手が震えていた。

その日から、私は少しずつ変わった。まず、自分の部屋に鍵をかけた。裕介が何か言いに来ても、無視を決め込んだ。

「おい、飯は?」

「自分で作って。」

「はあ?何言ってんだよ。」

「介護はあなたの仕事でしょ。私は手伝いよ。」

「ふざけんなよ。」

「ふざけてないわ。あなたが言ったんでしょ。『介護は女の仕事』って。だから、私はやらないわ。」

裕介は怒鳴ったが、私は無視した。お母さんの世話は、私はきちんとやった。でも、裕介の世話はしなかった。

数週間後、裕介は疲れ果てて家に帰ってきた。

「なあ、ちょっと話があるんだけど。」

「何?」

「最近、家のことが回ってない気がするんだ。俺、仕事から帰ってきても、飯もないし、洗濯もしてないし。」

「あなたが言ったんでしょ。『介護は女の仕事』って。私はお母さんの介護で精一杯よ。あなたの世話まで手が回らないわ。」

「それは…言い過ぎた。悪かった。」

「謝れば済むと思ってるの?あの日のこと、私は忘れないわ。」

「じゃあ、どうすればいいんだよ。」

「どうすればいいか、自分で考えなさいよ。私はもう、あなたの母親じゃないわ。あなたの妻でもない。あなたの都合で動く人間はいないのよ。」

裕介は何も言えずに、うつむいた。私は振り返らずに、お母さんの部屋へ向かった。

数日後、裕介は自分からお母さんを風呂に入れ始めた。夜中に起きることもあった。最初はぎこちなかったけど、少しずつ慣れていった。私は何も言わず、ただ見守った。

ある日、裕介が言った。

「なあ、ちゃんと介護って、どうやるんだ?教えてくれないか。」

私は少しだけ笑って、

「いいわよ。まず、お母さんが何を欲しがってるか、よく観察することから始めましょう。」

そして、私は心の中で思った。これで初めて、私たちは家族になれるかもしれない、と。

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