「おい、花嫁のお前が来ないなら結婚取りやめるぞ」——式場に向かうはずのない日、夫になるはずの男から電話がかかってきた。彼のお母さんが私の代わりにレストランを予約したって言うんです。でも、私は一度もそんな話を聞いていなかった。彼は信じなかった。「母さんが嘘をつくわけない」って。私が電話をしたことすらないのに、彼は母の言うことだけを信じている。結局、私は「私が決める」と言ったら、彼は「俺は母さん…
「おい、今どこにいるんだ?」 「家にいるけど?」 「はあ?何やってんだよ。花嫁のお前が式場に来ないってどういうことだよ。両親も親族もみんな待ってるんだぞ。今すぐ来い。来ないなら結婚は取りやめるぞ。」 結婚式は一週間後だよ。それに、キャンセルしてレストランに変えるってお母さんと決めたんじゃなかったの? 「いや、全然そんなことないし、キャンセルなんかしないよ。」 「俺の前で嘘つくなよ。早く来い。誠と誠の親族だけが来てないんだぞ。」 「急にそんなこと言われても困るよ。なんで私に確認しないの?」 「だって母さんがそう言ってたからだよ。」 「それ、お母さんの勘違いじゃない?」 「母さんが嘘をついてるって言いたいのか?」 「そう言ってるわけじゃないけど、事実とは違うよ。」 「母さんは俺たちの味方だ。困らせるようなことするわけないだろ。」 「本当にお母さんのこと信頼してるんだね。」 「当たり前だろ。母さんは昔から俺のためにいろいろ決めてくれた。母さんの言う通りにしなかったら、失敗なんてしたことないよ。」 「そっか。デートの時もよくお母さんのすすめって言ってたよね。」 「実際良かっただろ。うまい飯にSNS映えするスポット。母さんはセンスがいいんだ。」 「式場の打ち合わせの時もお母さんに相談したの?」 「そりゃそうだよ。母さんは俺たちより人生経験豊富なんだ。相談するのは当たり前だろ。」 「つまり、あなたはお母さんがいないと何もできないってこと?」 「そんなことないよ。」 「もっと自分で決めて行動しないと、また今回みたいな勘違いが起こるよ。」 「でも、母さんのアドバイスのおかげで誠と結婚までたどり着けたんだぞ。」 私はその言葉を聞いて、胸が冷たくなった。 「ねえ、どういう意味?お母さんの言うことが正しいってこと?」 「そうだよ。母さんの言うことは間違ってない。」 「それなら、このまま私が来なくてもいいの?」 「母さんの行為を踏みにじるのかよ。お前最低だな。このままじゃただの食事会になる。そっちの分の料金はそっちが払えよ。」 「なんで聞かされてもいないのに食事代を払わなきゃいけないの?」 「はい、払いません。私は何も聞かされてないので。」 「おかしいわね。私はちゃんと伝えたつもりだったけど。」 「そんなやり取り、どこにもありませんよ。」 「電話で連絡したじゃない。」 「お母さんと電話したことなんて一度もありませんけど。」 「あら、そうだったっけ?」 「そうですよ。じゃあ、レストランを予約したのは誰ですか?」 沈黙が流れた。 「……まさか、お前、母さんにそう言われてるのか?」 「俺は母さんを信じてる。母さんが間違うわけない。」 「じゃあ、私は何なの?あなたのお母さんの言う通りに動くだけの操り人形?」 その言葉に、彼は怒鳴り返した。 「余計なことは言うな。母さんは俺の母だぞ。お前より大事に決まってるだろ。」 私はその場で何も言えなくなった。心の中で何かが壊れる音がした。 結局、私は式場へは行かなかった。彼とお母さんが計画した結婚なんて、もうどうでもよくなっていた。 あの日、私は電話を切った後、自分が本当に望むものを考え始めた。彼がお母さんの言うことをすべて受け入れている限り、私は永遠に二番手のままだ。 だから、私は彼にこう言った。「結婚するなら、あなたが決めて。お母さんじゃなくて。」 彼は一瞬固まって、「俺は母さんを裏切れない」とだけ言った。 私は思い切って言った。「じゃあ、結婚しない。」 彼の顔色が変わった。でも、もう戻れなかった。私は涙を拭って、自分の人生をやり直すことに決めた。